有限会社ダンク
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役立つ!わかる!ラクラク校正講座

疑問は話すように書こう

疑問は話すように書くのがコツです。

1 まずは結論だけを書きます。明らかにおかしければこれだけです
〈ダメな例〉 日付と曜日、矛盾するがOK?
  矛盾してるんですからOKのわけがありません。それになんか偉そう。
〈ダメな例〉 日付と曜日がカレンダーと矛盾します。正しいものをお知らせください。 
  ていねいで良いのですが、ちょっと書きすぎです。
〈良い例〉 日付と曜日、矛盾しますが?
  これで十分。

2 結論だけだと疑問になったいきさつがわからない。そんなときは理由も書きます
〈ダメな例〉 Sは大文字でOKですか?
  なぜこの疑問が出たのか、さっぱりわかりません。

〈良い例〉 Sは大文字でOKですね? (原稿は小文字ですが、画像は大文字なので)
  このくらいしっかりと書きましょう。OKになりそうなときは「ですね?」とやわらかく。

3 「こうしては?」と提案することもあります
〈ダメな例〉 「価格を値下げしました」はおかしいのでは?
  おかしいと指摘するだけだと、無視されることも。
〈良い例〉 単に「値下げしました」としては?(重言なので)
  これでばっちり。親切でしょ。

*【疑問】 原稿のグレーな部分をお客さまに問い合わせ、白黒はっきりさせること。明らかな原稿の誤りでも、勝手に赤字にしてはいけません。原稿は神様。必ず疑問です。


価格は電話番号のように読もう

校正は難しい字よりも簡単な字のほうが危険です。難しい字は誰もが気をつけるので間違えることはありません。しかし簡単な字はさらっと読めてしまうので、見落としやすいのです。税と税と以、午と午AMとPM、店と店など、1字違えば正反対の意味になってしまいます。

数字も簡単な字なので十分注意してください。10時開店が9時開店だったらどうなるでしょう。間違った電話番号がおっかない事務所のものだったらどうなるでしょう。

なかでも「価格」の恐ろしさは別格です。全国チェーンのスーパーで、もしティッシュの値段を10円安くしてしまうと、損害はウン百万円になるのです。だから価格は電話番号のように確認してください。1,980円は「せん きゅーひゃく はちじゅーえん」ではありません。「いち かんま きゅー はち ぜろ えん」です。


二つの角度から見よう
ダンクの仕事は常に、校正者と消費者、両方の視点からのチェックが求められます。

例えば「カーネーション3本組」の写真をチェックするとき、校正者の目では「きれいに咲いたカーネーションが3本あればOK」となります。しかし消費者の目ではOKになりません。それはつぼみが1本もないと、長く楽しめないので買う気にならないからです。

消費者の目で見る。これは難しいことではありません。スーパーで牛乳を買うとき、コンビニで雑誌を買うとき、どこを見て「これにしよう」と決めていますか?


検算は最初と最後にしよう
税込価格、割引率、クレジット払いなど、1回目の検算は「原稿」で行います。その後価格に訂正が入ったときは(必ず入りますよね)、その都度忘れずに検算し、鉛筆でレ点チェックをしてください。

計算が合わないからといって勝手に直してはいけません。必ず疑問にしてください。売価、元値、割引率のどれが間違いなのかは、原稿を書いた人にしかわかりません。
2回目の検算は「最終校正紙」で行います。こうすれば万が一校正ミスがあったとしても、ぎりぎりで発見できます。

計算はこのように行います。*電卓がCASIOの場合。
●税込価格は
 税込 。 AC を押さなくても次の計算ができます。
●割引率は
 売価 − 元値 % 。これも AC は押しません。
●初回12,000円、残り11回が11,500円のクレジット払いなら、
12000 M 11500 × 11 M MR で138,500円となります。次の計算をするときは MC で表示されたMを消し、 AC で138500を0に戻します。


誤字を覚えよう
「この字、間違ってますね」「あれ!? 何回も見たんだけどなあ」。お客さまの持って来られたカタログをさっと眺めただけなのに、誤字が目に飛び込んでくることがあります。

誤字のパターンをたくさん覚えていると、危険な字が出てきたときに「正しいか」ではなく、「あの字になっていないか」と見ることができます。

なら蜂、横なら横、茶なら茶、内肉なら内肉、々麺なら々麺、週誌なら週誌、り出し物ならり出し物、量設計なら量設計、面入力端子なら面入力端子、熱防止センサーなら熱防止センサー、期待にえるなら期待にえる、古都をねるなら古都をねる…。調豆乳と無調豆乳はややこしいので要注意。

このパターンを増やすには、うっかりしそうな誤字に出合ったらこまめにメモを取ることです。1年もすればベテランと同じ「経験値」になれます。そうなれば、紙面(誌面)のこのあたりに何かありそうだとピンときます。


赤字の前後に注意しよう
正しかった文字や写真が、こっそりおかしくなってしまうことを「化け」といいます。

●受付期間を受付時間に変えたら、午後9時が午前9時に!
●価格の色を変えたら、1,980円が
1,900円に!
●文頭の文字を変えたら、文末のご利用くださいが
を利用くださいに!

デザイナーさんが赤字のところしか触らなければ、全てとはいいませんがかなりの化けは防げます。しかし1字直すのに文章を丸ごと打たなければならないときもあれば、別の場所を直してしまうこともあります(人間ですもん)。

もやっとした赤字が修正ミスの引き金になることもあります。例えば「自然の水を利用した」の「自然の」を「天然」にする赤字だと、「天然を利用した」にならないとも限りません。赤字検版では赤字の部分だけでなく、その前後もしっかり見るようにしてください。

*【もやっとした赤字】 「自然の水」を囲って「天然水」と書けば「水」は落ちません。
*【赤字検版(けんぱん)】 赤字どおりに直っているかを確認する作業。赤字引き合わせ、赤字照合ともいう。


事故事例から学ぼう

世の中の重大事故のほとんどは、機械の誤動作ではなく人間のポカによるものです。それは広告作りも同じで、制作に関わる全ての部署でポカが発生しています。

原稿の誤記、意味不明のメモ、口頭による伝達ミス、目立たない赤字、訂正で生じた矛盾、差替版の設定ミス、原稿なし部分の消え残し、勘違いの疑問、実画像の貼り忘れ、コピペによる化け、保存ミスによる先祖返り…。

他部署のポカで事故が起きたとき、それは校正の責任じゃないと突っぱねる校正者もいれば、そういうポカを想定して事故を未然に防いでいる校正者もいます。どれだけポカをカバーできるか、それがダンクに求められている「校正」です。

その力をつけるには、事故事例を勉強するのが一番です。過去の失敗例を見て、今のやり方でその事故が防げるかを点検し、無理だとしたら新しい方法を考えましょう。1,980円が1,900円だったとき、エラーを知らせてくれる機械はまだありません。

*【消え残し】 デザイナーさんの貼り間違いやコピペミスなどで、その商品に関係ない情報(主にピクト)が入ってしまい、それを校正者が見落としてしまうこと。校正紙にひそむ最も危険な地雷
*【先祖返り】 デザイナーさんが前回データから作るところを前々回データから作ってしまい、前回修正した箇所が元に戻ってしまうこと。〈例〉前回1,000円を900円にしたはずなのに、何でまた1,000円に戻ってるんだ!


公式サイトで調べよう
原稿はRだけどGじゃないとおかしい!? 申込番号やメーカー型番は、どんな法則で記号を付けているかがわかれば、原稿の間違いを見つけることができます。この場合「イエローがYでピンクがPなら、グリーンはRじゃなくてGでしょ」となるわけです。

でもここではまだ疑問にしません。刷見本で調べ、グリーンがGだったら「G?(刷見本P.85より)」と書きます。刷見本にないときはその会社の公式サイトで調べます。その場合は「G? (公式サイトより)」と書き、回答する方のためにその画面を印刷し、校正紙に添付します。

刷見本や公式サイトで裏付けのとれた疑問でも、全てOKになるわけではありません。数十回に1回は「刷見本が間違いでした」というどんでん返しが待ってます。

*【刷見本(すりみほん)】 最新の印刷物のこと。刷本、前号、前カタ(前号カタログの略)、サンプルともいう。
*【公式サイト】 オフィシャルサイト、公式ウェブサイト、公式ホームページともいう。間違いだらけのネット情報の中で、とりあえず信用できるのはその会社の公式サイトだけです。


色の法則を頭に入れよう
商品番号をからに、日付の地色をピンクから水色に、価格をオレンジから…。広告では色に重要なメッセージが込められています。

この例でいえば、通販カタログのエコではない商品がエコ商品に変われば、商品番号の色もからに、旅行パンフの宿泊料金が休前日プランから平日プランに変われば、日付の地色もピンクから水色に、チラシのお買得商品が超お買得商品に変われば、価格の色もオレンジからに変わります。

「Aが変わればBも変わる」。しかしお客さまからそれを教えてもらおうと期待してはいけません(お客さまは忙しいのです)。それでも、たぶんこういうことなんだろうなあと自力で法則にたどり着いた校正者なら、もしAにしか変える指示がなければ「Bも変わるのでは?」と疑問が出せます。だから、この色がこうなのはどうしてなんだろう?と考えるのはとても良いことなのです。


忙しいときはゆっくり歩こう

窓口さんの仕事は、どうすればそのミッションを早く確実にクリアできるか、戦略を立てることから始まります。Who(誰が) What(何を) When(いつ) Where(どこで) Why(なぜ) How(どのように)、この5W1HをA4判1枚にまとめれば、作業手順書のできあがり。

時間に追われているときも、窓口さんはのんびりと構え、作業を見つめましょう。想定外のことは起きていませんか? やり忘れている作業はありませんか? 

作業手順を早口で伝え、最後に「急いで」なんて付け加えたらもうアウト。伝え忘れることもあるでしょうし、窓口さんがピリピリムードだと「だろう判断」する人も出てきます。

読み合わせをお願いするときも、「読み手の人は、ときどきわざと間違えてね」とマニュアルを念押しするくらいのゆとりを持ちましょう。みんなが浮き足立ってる、そんなときだからこそ、ゆっくり歩き、にこにこして、「大丈夫だからね」という演出が必要なのです。


同じ文字はまとめて見よう
同じ文字や順番に並んだ文字はそれだけをまとめて見る。これは原稿照合、常識チェック、パタパタなどで毎日使う、広告校正の親分みたいなマニュアルです。

例えば注文番号が301-01 301-02…となっていたら、301だけを見ていきます。そうすると310が混ざっていても、301 301 310 ん!? と簡単に見つけることができるのです。301が終わったら次は-01 -02 -03…と見て、番号の飛び重複をチェックします。

カタログのツメチェックも章ごとに分担するのではなく、一人に任せましょう。そうすれば書体の違い位置のズレも簡単に発見できます。普通にやるより早く、正確にできる。これが良いマニュアルの条件です。

*【パタパタ】 赤字カンプと修正カンプをぴたっと重ね、パタパタとあおりながら赤字以外の箇所が化けていないかをチェックすること。あおり検版、重ね照合ともいう。


誤字は目をつぶって見つけよう
お客さま  ダンクさんって、ほかの校正会社とどこが違うんですか?
  
さて、あなたならどう答えますか? 

ダンク  会社からは「字の間違いなんか目をつぶって見つけろ」と言われています。
  これでは答えになっていません。でもこれでいいんです。次は必ずこう訊かれます。

お客さま  へえ!? じゃあ、目を開けてるときは何をするんですか?
ダンク  会社からは「常識チェックをしろ」と言われています。
お客さま  常識チェックってなんですか?
  
そうこなくっちゃ!

ダンク  たとえば、カーネーション3本の写真を確認するとき、きれいに咲いたカーネーションが3本写っていれば…。
お客さま  いいんじゃないでしょうか?
ダンク  いえ、ダンクではOKになりません。それはぜんぶ咲いたものより、つぼみのあるほうが売れるからです。だから「つぼみのある写真に変更しては?」と疑問を出すようにしています。


お客さまと同じ言葉で話そう

ダンクで使っている校正用語の中には「一歩外に出たらちんぷんかんぷん」というへんてこりんなものがいくつもあります。例えば刷り出し。本来は「きちんと印刷されているかをチェックする」という意味ですが、ダンクでは最終校正のことです。原稿引き合わせや突き合わせのことは付け合わせ。でも辞書だと「肉料理などに添えるポテトやにんじん」となり、重厚感に欠けますね(笑)。

あおり検版や重ね照合はパタパタ、赤字引き合わせや赤字照合は赤字検版、素読みや校閲に似たような作業は常識チェックと言います。ほかにも大基本(だいきほん)とか空基本(からきほん)とかイキシニくんとか…。

ただしこれらが通用するのはダンクの中だけです。お客さまとお話しするときはお客さまの言葉に合わせてください。原稿や先方チェック紙が何種類もあるときは、お客さまにそれぞれをどう呼んでいるのかお訊きし、チーム全員で同じ言葉を使うようにしましょう。


納得してから印を押そう

もし大切な人から「保証人になってほしい」と頼まれたら、あなたはどうしますか? 保証人なんて絶対にイヤ、というのはわかっています。でも、どうしても断れない状況だったら…と考えてみてください。おそらく「契約書」の隅から隅まで目を通し、わからなければ質問し、納得するまで署名・捺印しないはずです。

校正も同じで、隅から隅まで、納得するまで確認しなければいけません。校正者が黄色のダーマトで文字を消し込むというのは、1字ずつに確認印を押しているのと同じです。また、作業終了後に校正者印を押すというのは、「わたしが責任を持って、隅から隅まで確認しました」ということなんです。だから、窓口さんから消え残しを指摘されて、「そこも見るんですか?」なんてことでは困ります。

すべての作業が終わったら、最後に1分間、消え残しがないか、やり忘れていることがないかを見直しましょう。印を押すのはそれからです。

*【ダーマト】 dermatographの略。クレヨンみたいな色鉛筆。芯の周りの紙をむいて芯を出す。接着が強すぎるとうまくむけず、イライラする(と書いても、見たことない人にはわかりませんよね)

「、」や「・」にこだわろう
「じゃあ、またね」と「じゃあまた、ね」。あなたがデートの帰り際、お相手からささやかれたいのはどちらですか? わたしはだんぜん「じゃあまた、ね」派です。ムフフ。

それはさておき、校正者は「、(読点) ・(中黒) アキ 改行」の違いに敏感でなければなりません。以前、医薬品のコピーで「、」が落ちてしまい、薬事法に抵触するのでは? と大騒ぎになったことがあります。また、「パインアップル」と「パインアップル」はもちろん、「オレンジ・アップル・パイン×各2」と「オレンジアップル・パイン×各2」もまったく意味が違ってきます。

広告校正に欠かせない、この文章チェック力をつけるには、本をたくさん読むよりも、自分の好きな文章を書き写すのが一番です。「むむっ、『強敵』と書いて『とも』と読ませるのか」とか、「この『しっとりサクサク』が、もし『じっとりサクサク』だったら気持ち悪いな」というふうに、楽しく勉強できるでしょう。


安全管理のミーティングをしよう
校正スタッフのミーティングといえば、テーマの99%が安全管理に関することです。ではほかの部署もそうかというと、そうではありません。売上目標や仕事の進捗状況の確認などが主で、「安全」が議題になるのは大体何かが起きてからです。

ヒヤリ・ハットを減らすミーティングが、どれだけ重要なのかはいうまでもありません。しかし、部署も立場も違うみなさんに、それを理解してもらうのは大変なことです。安全管理は、手間も時間もとんでもなくかかると思われています。でも実際はその反対で、少し話し合っただけで、後(あと)工程がぐんとラクになることが多いのです。

ハインリッヒの法則、割れ窓理論、三現主義、源流管理、ヒューマンエラー、システムエラー、フィードバック、ダブルチェック…。こんな安全管理の専門用語がミーティングで自然に使われるようになれば、そのチームは確実に強くなっていきます。

*【ハインリッヒの法則】 別名「1:29:300の法則」。1件の重大事故の裏には29件の軽傷事故(クレーム)と300件のヒヤリ・ハットが存在するといわれています。


奥さま目線で判別しよう
表記統一の目的は、気持ちよく読めるようにすることです。

1 お客さまの『用字用語集』にある → 赤字にします
〈例〉 
ください ×下さい   いただきます ×頂きます
でも、もしすべて「下さい」だったら、改訂版があるはずなので、赤字ではなく疑問です。

2 パッケージの文字と原稿が不一致 → 疑問にします
〈例〉 パッケージは海サラダ、原稿は海
サラダ。「海としますか?(Pより)」

3 世の奥さま方が「ヘンなの」と思うもの → 疑問にします
〈例〉 タイトルはライン
ップなのに、本文はラインップ
「ライン
ップで揃えますか?(朝日新聞の用語の手引より)」

では、タイトルも本文も「ラインップ」だったらどうしましょう? その場合は見て見ぬふり、何もしません。表記がヘンかどうかは「奥さま目線」で決めてください。『朝日新聞の用語の手引』やあなた自身がどう思うかは、どうでもいいのです。

*【P(丸囲いのP)】 photographの略で写真(画像)のこと。M(明朝とかマゼンタ)、G(ゴシック)、K(罫線とかブラック)なども、覚えておきましょう。


疑問は全勝を目指そう

頭は悪くない。仕事もていねい。でも結果が出ない。そんな人のことを「残念な人」というそうです。

〈残念その1〉 P.80の「あきらか」を「明らか」にしますか?(P.50の3行目より)
80ページの「あきらか」を見て、「ずいぶん前に『明らか』があったぞ」と一生懸命捜したんでしょうね。でも時間のムダ。30ページも離れていたら、誰も気になりません。

〈残念その2〉 「取扱品目」を「取り扱い品目」としますか?(「取り扱います」があるので)
よく目にする表記で、まったく問題ありません。なんでも揃えればいいってもんじゃありません。「取扱ます」…ヘンでしょ。

〈残念その3〉 品名に合わせ、コピーも「ぷりん」にしますか?
品名は「ミルクたっぷりぷりん」、コピーは「牛乳をたっぷり使ったまろやかなプリンです」。固有名詞と普通名詞、揃える必要はありません。


赤字におまじないをかけよう

どう考えてもありえない入力ミス」や「コピペによる化け」に出くわすことがあります。たとえば、国内産濃くない酸だったり、1,000円98円なんて打たれていたら赤信号。

入力ミスをゼロにすることはできませんが、大幅に減らす方法はあります。ここは入力ミスを減らす「おまじない」の出番です。

赤字を書いたらその横に、ちょこちょこっと謎の呪文を書くだけ。たったこれだけで効果抜群です! (それだけに、用法・用量を守り、正しく使いましょう) えっ、どんな呪文か教えてほしい? たいへん申し訳ないのですが、企業秘密のためここでは公開できません。

*「そこをなんとか」という方にはこっそり教えますので、メールでお問い合わせください。

ときどきわざと間違えよう
読み合わせ校正での読み手の役目は、ニュースキャスターのように原稿を正確に読むことではありません。内容の常識チェックをしながら、書き手が誤りを見つけられるように工夫して読むことです。そして、ときどきわざと間違えましょう。

普通に読んでいても間違えることはあります。でも、校正を始めるときに「ときどきわざと間違えます」と宣言すれば、書き手は読み手がわざと間違えたときに反応できないとバツが悪いので、気が抜けなくなります。

地名、店名、人名などの固有名詞は、どんな字が使われているかを書き手に正確に伝えましょう。とはいっても、たとえば「弘前」を、水原弘の「弘」に前後ろの「前」なんて言うと、聞いてるほうはこんがらがっちゃいます。

そこで、弘前(ひろさき)なら「ひろまえ」、苫小牧(とまこまい)なら「とまこまき」、栂(とが)は「木へんに母」、不二家は「ふじいえ」、キヤノンは「ノン」というように、わざとヘンな読み方をして、すぱっとわかりやすく伝えましょう。


3手先まで考えよう

今すぐ確認したいことがあるのに、窓口さんはパタパタの真っ最中。そんなときあなたはどうしますか? 「ちょっといいですか」と声を掛ける!? これ最悪。切りのいいところまで待って、次のように質問してください。

1 まず結論だけを伝えます。「何をどうしたいのか」だけ話してください。
〈ダメな例〉 約2268席ってヘンじゃないですか?
〈良い例〉 この「約」を取りたいんですが?

2 何か訊かれるまで黙っていましょう。窓口さんは今、「なぜ2268なんてハンパな数字に『約』が付いているんだろう?」と考え中です。

3 窓口さんの次の一手は、当然「刷見本はどうなってるの?」です。あらかじめ刷見本や公式サイトで調べておきましょう。
〈ダメな例〉 ええと…今調べます。
〈良い例〉 (さっと刷見本を見せて)こっちにも「約」が付いてるんですよ。

こちらがこうする、相手はこう来る、そうしたらこうする。物事は3手先まで読んでからアクションを起こすと、うまくいきます。


カンプに引きずられないようにしよう

赤字の意味がはっきりしないとき、修正されたカンプを見て、「な〜るほど、そういう意味ね」って納得すること、ありますよね。100%納得できればいいんです。でも99%だったら気をつけましょう。修正カンプに引きずられてはいけません。

校正者が理解不能の赤字を、どうしてデザイナーさんは直せたんでしょう? 「何かおかしい」と感じたときは、たいてい何かあるものです。追加訂正がデザイナーさんで止まっていたり、校正に届いていないメールがあったり…。

グレーな部分をそのままにしておくと、いずれ痛い目に遭います。だから、「どうしてこうなったんですか?」とすぐデザイナーさんに問い合わせましょう(優秀な校正者はフットワークもいいのです)。

事故が起きてから「ああしておけば…」と後悔し、同じ過ちを繰り返すのが普通の校正者で、事故が起きる前から「そうしておく」のがプロの校正者です。 

*【カンプ】 comprehensive layoutの略。デザインチェックや校正に使う、広告や印刷などの制作見本。


価格は1字ずつ縦に消そう

わたしたちは電話番号を人に伝えるとき、「03」「5817」「3741」と区切って伝えますよね。その上最後に、書いたメモの復唱までしてもらう念の入れよう。間違えるはずがありません。「価格」を校正するときも、こんな工夫が必要です。

\19,800が\19,880だったとき、どうすればそのミスを確実に拾えるでしょう? まず声に出す。付け合わせなら小さく、読み合わせなら読み手に聞こえるように「いち きゅー かんま はち ぜろ ぜろ」と声に出しながら、黄ダーマトで1字ずつ縦に消し込むのです。

1人目がこういう見方をして、ダブルチェックの人が「19」と「800」のように、カンマの前と後ろに分けて校正すれば、ひとケタ多い\198,000のときも、カンマの位置がおかしい\198,00のときも、確実に反応できるはずです。


白黒コピーで校正しよう

文字の色を変えたら数字が化けた! 関係ないピクトがいつの間にか入っていた! DTPが普及したおかげで、それまで色校や下版でしかできなかった「画像や色のチェック」が、早め早めにできるようになりました。しかし、やはり新たな問題が発生しました。

一つ目の問題は「コピペによる化け」です。これは、デザイナーさんが制作や修正のとき、似たような文字をコピー&ペーストして、その後に差異(コピーと違う部分)を直し忘れて起こります。まったく予想していなかったところも化けるので、修正が1カ所だからといって安心はできません。必ずパタパタで紙面全体を合わせてください。

二つ目の問題は「修正もれや消え残し」による事故が激増したことです。それまでの白黒コピーと違って、カラーカンプは修正指示や消え残しが目立ちません。よほど注意して見ないと見落とします。だから「ここぞ」というときの校正では、カラーカンプではなく白黒コピーを使いましょう。

*【DTP】 desktop publishingの略。レイアウト、写植、版下、分解、レタッチなど、各部署のエキスパートが分業していた作業を、パソコンを使ってデザイナーさん一人でするようになった(なってしまった、かも)。


別紙は読み合わせにしよう

赤字検版のとき、〈別紙参照〉の文字があったら要注意です。それは、「大幅なレイアウト変更」とか「表組みや長文の追加」とか、ヘビーな仕事になることが多いからです。当然、赤字の常識チェックにかかる時間も、別紙があるとないとではぜんぜん違ってきます。

別紙は「読み合わせ」で確認しましょう。「プロなのに読み合わせ?」と思う人は、広告校正検定10級以下です(まだそんな検定ありませんが、そのうち作ります)。

赤字検版は1人でする作業、なんて決まりはありません。だから、赤字が多いときも「読み合わせ」にしたほうが安全です。「付け合わせ」は脆(もろ)い。覚えておいてください。


チェックシートは横から目線で作ろう

チェックシートはひじょうに優れたポカヨケシステムです。でも現場を知らない人が作って、現場に「ぽい」と渡すだけではダメ。正しく使っているかを監視する、監督責任者を決めておかないと、CIマークのないページなのに「CIマークの色は正しいか」にチェックがあったり、結局まじめにやっているのはミスの少ない部署だけ、なんてことになります。

「チェックシートの使い回し」や「指示があいまい」なのもよくありません。たとえば、「仕上り寸法は正しいか」は「タテ○○mm×ヨコ○○mm」とサイズを明記したほうが安全です。料理のレシピだって「塩を入れる」ではなく、「塩 小さじ1」となっていますよね。

文体も度を越さない程度に「その人らしさ」が出ていると楽しいですね。たとえば、「…は正しいか」を、過去の事故事例を反映して「…にはなっていませんね?」にするとか、最後に「安全確認、ありがとうございました。」と一文添えるとか。どんなシートならチェックしたくなるか、実際にチェックするみなさんといろいろ相談して、試してみてはいかがでしょう。


説明したら復唱してもらおう

広告校正では「200ページのカタログを3日で」とか「差替80台のチラシを2日で」ということがよくあります。もちろん何人かで手分けしなければできません。それを管理し、全ページに統一感を持たせるのが窓口さんの役割です。

でも、ここに落とし穴があります。窓口さんが作業手順を細かく説明すればするほど、チェックもれが増えるのです。なぜでしょう? それはわたしたちの記憶装置がそんなに優秀ではないからです。

上質なコミュニケーションを確立する方法はこうです。〈ステップ1〉チェック項目をA4判1枚にまとめ、スタッフに渡します。〈ステップ2〉お願いするのはその中の1項目だけ。1分で説明します。〈ステップ3〉説明が終わったら、「何をするんだっけ?」とスタッフに訊いて、正しく理解しているかを確認します。

「参照ノンブルのチェック」や「めったに出てこない用字用語のチェック」は、誰か1人に任せます。こうすれば、チェックの精度も高まり、終わる時間も読めてきます。「ちゃんと説明したのにモー」とぼやくウシさんは、わかってないのです。

*【上質なコミュニケーションの確立】 手渡された様々なメッセージを、正確にきちんと手渡しで返すこと。ダンク創立以来の哲学。


赤字修正箇所は二度見よう

赤字検版は、1人目が黄ダーマト、ダブルチェックの人が黄緑ダーマトで行います。まずレ点チェック。赤字がごちゃごちゃのときは、レ点の代わりに赤字を黄色で消し込んだり、丸で囲む、という方法もあります。

「そんなことして大丈夫?」と思うかもしれませんが、黄色はオールマイティーなので大丈夫。でもダブルチェックの人は、黄緑なので小さなレ点だけにしてください。

次は校正紙の消し込み。1人目は、赤字どおりに直っているかを確認したら、そこを黄色で消し込みます。ダブルチェックの人は黄緑なので何もしません。

最後はパタパタ。ミスする人としない人の違いはここにあります。ミスする人は黄ダーマトで消し込んだところ(修正箇所)に来ると、さっきがっちり見たから大丈夫と決めつけて、先に進んでしまいます。

一方ミスしない人は、さっきがっちり見たけど大丈夫かなあと、ここでもう一度赤字どおりに直っているかを確認します。「赤は止まれ」、いえ、校正は「赤も黄色も止まれ」です。


赤字の常識チェックをしよう

「稲庭そうめん」に「稲庭うどんの画像入れる」のお客さま赤字!? 「京料理・はもしゃぶ」に「横浜の名店からお届けします」のお客さま赤字!? 赤字検版は、赤字どおりに直っているかだけでなく、その赤字が正しいかまで確認しないといけません。

何の変哲もない赤字が「爆弾」になることもあります。たとえば「1,900円」というお客さま赤字。原稿もカンプも1,980円なら、よくある価格変更。でも、デザイナーさんの入力ミスでカンプが1,880円だったら…かなりヤバいです。

お客さまが、価格変更したいのか、1,980円と書くつもりが1,900円と書いてしまったのか、わかりません。そこで「赤字どおり1,900円でOKですね?(原稿は1,980円ですが)」と念のため疑問を出します。お客さまは赤字をよく書き間違えます。


レ点のありなしに注目しよう

赤字検版で目にする、デザイナーさんのレ点チェック。「修正済み」という意味で、赤字の後ろに色鉛筆でちょこんとチェックがされています。まれに、レ点ではなく赤字に×をしてくるデザイナーさんもいますが(事故になっても知ーらない)。

修正もれに出くわしたとき、このレ点のありなしに注目するといいことがあります。レ点がなければ単純な修正もれ。ではレ点があったら…化けの可能性大です! おそらく別の場所を直しています

たとえば、820円を840円にする赤字があったとします。デザイナーさんのレ点はあるのに直っていない!? こんなときは、周りに840円がないか探してみましょう。ほらね、すぐ横に化けた840円があったでしょ。「神は細部に宿る」。


修正もれはすぐに戻そう

修正もれがあったら、カンプにその赤字を転記して、デザインに戻しますよね。それを見たデザイナーさんが「あれ…ここは直したはずだけど、隣りを直しちゃったかな?」と、隣りが化けているのに気づいてくれればひと安心。

でも、こちらがもたもたしているうちに「終電なんで、あとはよろしく」とその人が帰ってしまったら…あとを任された夜番のデザイナーさんは、隣りが化けてるなんて知る由(よし)もありません。

「修正もれを見つけたら、すぐに戻す」。これは意地悪でも何でもありません。安全対策です。絶対OKにならないカンプをパタパタしても、危険度が増し、無駄な手間とコストがかかるだけです。


赤字にアクセントをつけよう

赤字を書くときは、周りの人がイラッとするくらい、ゆっくりとていねいに書きましょう。たまに、斜めに殴り書きしてある赤字を見ますが、事故のもとです。「ハンドルを右に」と書いたつもりでも「インド人を右に」と打たれるかもしれません。

「価格」のような責任重大赤字は、大きな字で書きましょう。同じ赤字が何カ所にも入るときは、引き出し線が1本で済むよう、「トル(黄緑マーカーの10カ所)」とまとめましょう。

想像してみてください。あなたのちょっとした気配りで、校正紙を見た人が「わぁ、きれい♪」って感激するシーンを。とってもハッピーだと思いませんか? 「わかりやすくて、読みやすい」。これは新聞、広告、校正紙に共通するキーワードです。


原稿は貴重品のように扱おう

原稿はB4なのに、訂正原稿はA4だったりB5だったり…ということがよくあります。そのままだと校正者に気づいてもらえなかったり、何かにまぎれてなくなってしまう恐れもあります。ではどうするか? すべて同じ大きさにコピーし直してファイルしましょう。

原稿整理は、「原稿に訂正原稿や疑問回答を添付する方法」と「変更情報だけを原稿に転記する方法」があります。どちらもダブルチェックが必要です。ダブルチェックの人は「1人目の原稿整理ミス」だけでなく、「校正者に正しく伝わるか」もチェックしてください。

〈ダメな転記例〉  Nintendo  OKです(疑問回答より)
何がOKなのか予想もつきません。転記した人に尋ねたら、原稿はいつも「任天堂」なので、「今回は英字でOK?」と疑問を出し、「OK」をいただいたそうです(わかるか!)。
〈正しい転記例〉  Nintendo ← 英字でOKです(疑問回答より)

パンチ穴が傷んだら、パンチラベルで補強。でも最初から傷むのがわかっているなら、穴を開けたときに貼っておきましょう。何事においても「美しい形は強い形」、なのです。

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